今までにないといわれるほどの好天続きに恵まれた、2006ゆうゆう館タスマニアトレッキングの旅。
貴重な動物、植物の多いオーストラリアの中でも、さらに貴重な固有種を抱いているタスマニア島を
、
知識ではなく肌で感じて欲しいということで企画したツアーです。
スイス、ネパール、素晴らしい山々は数限りなくあるけれど、そのどこにもないだろう自然の尊さ、儚さ、美しさに出会えました。
タスマニア島に近づくほどに厳しくなる空港のチェック体制は、この環境を守る為であったのだということが、旅を終えた今しっかりと理解できます。
人が行き交うことで、生活していくことで、じわりと環境を変えてしまうことは仕方のないことですが、
小さな積み重ねが長い目でみた未来の森の姿を作っていくのだなあと思いました。
シドニーなど本土に広がる乾燥した草原、まばらな木々の赤茶けた大地や、タスマニア島の放牧地などと、
今回訪れたクレイドル山−セントクレア湖国立公園の豊かな草原や雨林や潅木の森を見比べると、その違いに愕然とします。
気候を含めた自然の絶妙なバランスがこの森を守っているのでしょう。
私達が滞在したロッジは国立公園の境界ぎりぎりにある、ロッジ村といった趣のところで、周辺を起点にたくさんのトレイルがありました。
1〜2日の滞在では、天候の状況により代表的なトレイル1本を歩けるかどうかです。
それではこの旅の目的であるタスマニアの自然を肌で味わうということができないかもしれません。
そんなわけでゆうゆうツアーならではの、ロッジに4泊というゆったり滞在としたのでした。
それが大正解。天候にも恵まれて毎日トレイルを歩くことができ、
一番天気の良かった2日目はクレイドルマウンテン山頂へのアタック班と、手前のマリオンズピークへの班とにわかれ、青空のもとトレッキング。
この日ほどたくさんのトレッカーに出会った日はありませんでした。
どちらも満足の眺望を得てロッジへ帰着。お互いにレポートしあいながらの夕食でした。
さて、日帰りのトレイルをおおかた歩いてしまった最終日は、自由にプランニングして過ごしました。
吹雪の翌朝だった初日には開いてなかった花々を撮影しに、再度歩いた人。
整備がそれほどされていない、ちょっとレベルの高いトレイルに挑戦してみた人。
ロッジでティーを楽しみ、寛ぎながら手紙を書いていた人。湖とクレイドル山を一望できる場所でぼーっとできる時間を過ごした人。
あわただしい観光旅行にはない、長く滞在しても過ごせる過ごし方、急がない、
ゆったりした時間の使い方を、それぞれが有意義なかたちで見つけられたようです。
景色が素晴らしいこと以上に、私たちを感激させたのはたくさんの動物達でした。
ロッジのすぐ目の前で、ウォンバットやワラビー、パディメロン、ハリモグラといった野生動物たちが日常の生活を営んでおりました。
ここでは一切の餌付けを行っていませんが、時には慎重で姿を見せないタスマニアンデビルの気配すら?感じられたほどでした。
有袋類ゆえなのか親子連れの野生動物に出会うことが多く、一生懸命草を食みながら、
そのバリバリ食べる音や息遣い、手触りが伝わるほどに近寄っても平気です。
人馴れしていないということ以上に、人に構ってなどいられないという「生きることに必死」な姿に胸を打たれ、生命の強さを感じました。
タスマニア島をはなれる日に、ホバート空港の北にあるボノロング動物園を訪れました。
ここは怪我をした動物や交通事故で遺児となった動物達の保護施設でもあり、
痛々しく思いながらも念願のタスマニアンデビルに会うことができました。
オーストリアの野生動物達に多い(と私は思うのですが)アンバランスな体形は本で見たとおり。
あれで速く走れるのかなあ?それともその必要がないのでしょうか?
クレイドルマウンテン国立公園が「世界自然遺産だから歩く」のではなく、
「なぜ世界遺産なのか?」「なぜ守らなければと思うのか?」ということに注目し、
実際に歩いてきてさらに思うことは、自分達が歩くこの一歩が、クレイドルの自然を荒らしませんようにという、
いささかの矛盾を含んだものでした。世界遺産という指定をせず放っておくには、現代はあまりにも情報化が進んでしまっています。
しかし、ここから感じたことを一人ひとりが実践していくことで、
やがて多くの人々の意識が、残したい自然へと向いていくようになることを願って旅のレポートを終えます。
ゆうゆうゆったり冒険ツアー、次はどこへコンパスを向けるのでしょうか。またご一緒に歩く日を楽しみにしております。
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